はじめての導尿

親の様子が二三日おかしかった。

どうおかしかったと言うと難しいが、気が付いたのは一つは絡んでくる。一つは動きが悪い。一つは食事中もテレビを見ようとして食事内容は上の空といった具合。

ひょっとして具合が悪いのかと直接聞くと「最近、体がだるい」
どのくらい前からと聞くと「日曜日から」

つまりえ5、6日前から具合が悪かったのだ。
年寄は自分から具合が悪いと言わないので、普段の観察と直接訊ねるしかわからない。

とりあえず体温と血圧を測る。平熱、血圧もOK

わが親の場合、病歴をたどって消去法で解決策を探る。

この人は一年前に白内障手術、腎盂腎炎、その二年前に細菌性肺炎と低アルブミン血症と低ナトリウム血症と誤嚥性肺炎と心不全の疑いと大腿部頸部骨折を半年間に順番にやっており、4年前には胃癌摘出手術を受け、5年前には脊柱管狭窄症の手術を受け、13年前に頸髄損傷の後、後縦靭帯骨化症の後方からの椎弓形成手術を受け、同時に前立腺肥大と高血圧を発症し、15年前は胃の上皮の手術を受けと高齢者になってから体を切りまくっている。
また神経を傷つけたため気象病のような症状がでるので台風や寒冷前線の通過、接近は体調が一気に悪くなる。

疑わしいのは。

とりあえず塩分と水分を取らせる。寝かせて様子見したが、塩分ではないらしい。
その次。糖分を取ってみる。胃切除の為ダンピングで血糖値が下がりすぎてないか。ポカリスエットを50ccほど飲ませる。違うようだ。
さて、天気はいいし、気象病でもないとすると。

寝ているうちに自分の唾液を肺に吸い込んでしまった肺炎の始まりか?と思ったが朝の体温は36度4分。朝普通だとこれも違う。

となると膀胱の細菌が悪さしてるかも。

導尿を試みる。といっても初心者なのでナースに聞いたことを実践する。説明を受けただけの見よう見まねである。
使い捨ての手袋をして、ベッドにビニールシートを敷いて本人を寝かせ、陰部を専用の消毒液のついたコットンでふく。同時に手袋も拭く。病院で受け取ったカテーテルの袋を破いて麻酔と消毒のゼリーをカテーテルと陰部に塗る。そしていざ!

「入れるよー息を吐いてーすってーはいてー」
膀胱カテーテルをゆっくり差し込む。途中でカテーテルの先が止まる。膀胱の入口に来たらしい。

「はい、しーしーしー 息吸ってーはいてー」
そーっと入れていく「いててて!痛い!」

驚いてストップ。
「大丈夫?」「うん」「じゃあいくよー」

本人も涙ものだろう。

本当にゆっくりゆっくり。カタツムリが進むくらいのスピードで入れていった。カテーテルの長さの残りが12,3センチになった。おしっこが出てきた。成功だ!

「出たよー」「おおー」

よかったよかった。おしっこは用意しておいた100円均の計量カップに入れる。透明でどれだけ出たかわかる。
トイレ直後1時間200ccほど出た。最初は綺麗だったが途中終わりごろからドロドロ。白色の尿だ。

確かにこれはあやしい。熱が出ないだけ良かったくらいの色だ。
腎盂腎炎の時は急激に熱がでて、一時間に体温が一度上がり39度くらいまで一気に上がった。あの時見たのはこれ程ではなかったが、汚れている方だと思った。

片付けて本人を寝かせる。

抗生物質を使えばいいのかもしれないが熱が出てないし、耐性菌が増えると嫌なので出来れば飲ませたくない。それは当人も承知している。

寝かせると10分しないうちにいびきをかいて寝てしまった。

翌朝。熱もなく、親が自分でベッドから起きてきた。
少しは調子が良くなったらしい。とりあえずほっとした。

訪問ナースに伝えるとそのままかかりつけDrに連絡が行った。
最近、かかりつけDrも訪問ナースとクラウドで情報共有してくれるようになったよと、ナースから聞いた。先生やるー♪

どうしてケアマネの事務所は未だに紙と電話でやっているんだろうということは横に置いておいて。

導尿のおしっこの色はタブレットで毎回写真にして記録してある。
見比べるとかなり色が違う。

今回の体調不良の原因は不明だけど、この後に来ると予想される高熱は回避できたと思う。ナースに聞くと最近利用者さん、ヘルペスが流行って調子の悪い人が増えているらしい。自律神経が悪くなっているか、夏バテか。どちらにしても要注意な季節になった。